「ヤマネ!起きろ!」と、今度はヤマネに白羽の矢が立てられた。
帽子屋はすっかり開き直ってしまったのだろうか。今度はこんなことを言い出した。
「じゃあ、聞かせてもらうが、お前さんの時計は、は、今が何年かわかるのかい?」
「それはわからないわ。だって、時計ってそういうものじゃないのよ」
帽子屋は何も反応しなかった。
「ところで、なぞなぞはわかったか?」もう終わったかと思っていたが、突如、帽子屋が話題をなぞなぞに戻した。
「だから、言ったじゃないの。このなぞなぞに答えはないんでしょ?」
すっかり呆れてしまった。
「わたしも、答えなぞ、さっぱりわからん」
「私も」と三月うさぎ。
「とにかく時間の無駄よ」きっぱりと私は言い放った。「もっとマシなことに時間を使ったら?」なんだか物語のアリスの気持ちがよくわかった。こんな下らない話題に巻き込まれたアリスを可哀相だと同情心すら芽生えてき
た。
「わたしは時間と相性が悪い。奴のことは理解できないんだよ」
「全く!またわけのわからないことを……」私はため息をついた。でも、よく考えてみると、今までわけのわからないことを言っていた帽子屋ではあるけれど、一理あるかも。私はそう思い始めた。
「時間の事をもっと知って仲良くすればいいのよ。そうすれば、時間をもっと大切にするんじゃないかしら」
「どうやって?」帽子屋は興味津々のようだった。
「例えば…」と言いかけた時、三月うさぎが、
「 仕事や学校の授業が始まる時間、そう、9時。あの時間は嫌いだから、時計の針をぐるぐるっと回して、12時にするんだ。そうすると、ほら!ランチタイム。どう?」
「そりゃ、いい考えだな」と、帽子屋がうんうんと頷いて聞いている。
「ずっと12時にしておけば、ずっとランチタイム。ついで、たっぷり昼寝もできる!」嬉しそうにヤマネ。
三月うさぎは自信満々で「そうすれば、時間とも仲良くやっていけるんじゃないかな」と。
「そうかしら?」私は、そんなに世の中うまく回っているわけじゃないと思って、そう発言した。「だって、もし、時間が時計の針を回すことに反対したらどうするの?」