「遠慮しないで言ってよ」
彼は一瞬考えました。
「じゃあ…」
小人は笑いました。
「な、コミュニケーションだろ?これだけでもよ。で、何だよ」
彼も笑いました。
「このアゴ、何とかならないですかね?これじゃ表も歩けないし、また小人に住み着かれても困るって言うか」
「そうだよな。俺たちにはちょうど良いけど、あんたらの世界じゃ新種の生物みたいに見られるかもしれないからな。よっしゃ」
小人は自分のアゴを二度さすると、その手を彼のアゴに向け、念を送るように一度、力みました。
「よっしゃ、これで大丈夫。寝て起きたら、それ治ってるよ」
「本当ですか?」
「大丈夫。大丈夫。それじゃあ。達者で」
小人は片手を上げて、去って行きました。
彼は頭を軽く叩いてから、自分のアゴに手を当てました。
まだ十七アゴのままでした。
洗面台に置いたままのプリクラの自分と両親の顔を眺めました。
もうモヤモヤした気持ちは浮かびませんでした。
それを寝室に持っていき、机にしまいました。
寝るには早い時間でしたが、彼は疲れてしまったので布団に入りました。
明日、このアゴがすっきりしていますように。そう願いながら。
朝がやってきました。
彼は太陽と共に目覚めました。
でも結果が怖いし、半信半疑だったのでアゴに手を当てることはできませんでした。
しかし、結果は知らなくてはいけません。
洗面所に向かい、自分の姿を確かめました。
普通の二重アゴの男の姿が映りました。
それは昨日の小人とそっくりでした。