かぐや姫は、今は三十三歳になり、この辺りで暮らしていることも分かっている、とカーラは言った。その話になったとき、私は何か悪い予感がしていた。そしてその懸念は当たっていた。
実際、私はそのかぐや姫のことを知っていた。
十二歳のときに彼女と出会っていた。飛行船のドアを開けて中に入る前、茂みの中に見たあの女性だった。それに私はつい少し前にも会っていた。それは今日このホテルで結婚式を挙げた新婦で、シュウの結婚相手だった。
しかしカーラと出会ってこんな話をするまでは結びつかなかったことだ。あの女性が友だちの結婚相手だったなんて。
間違いないだろう。カーラは彼女のことを探している。そう考えたとき、私は早く部屋に戻りたい、と思った。もしカーラがそのことに気付いて今夜のうちにシュウの結婚相手を説得して飛行船に連れ戻すことになれば、一生、シュウから恨まれることになるだろうから。
7
カーラは時計を見た。
夜が明けたら仲間のところに戻ろうと思うがそれまで部屋で休ませてほしい、と彼女は言った。だいぶ酒にも酔っているようだった。
夜はもう少しで明けようとしていた。
私たちは窓際のテーブル席に向かい合って座り、窓から外を眺めながらしばらく話を続けていた。
「どうして未来へ行くの?」根本的な疑問だった。
「ある事情があって未来ですることがある」と、カーラは答えた。
どういう事情か、掘り下げて聞こうとした。しかし彼女は話してくれなかった。時空を超えて旅をしていることは話したのに、運命的な再会を果たしたくらいで私にその事情は話せないらしい。
「きみはどこかに残ろうと思ったことはないの?」
「ないかな」と、カーラは答えた。
できればずっと傍にいてほしい、という想いを伝えるには、遠まわしすぎたかもしれない。まだ会って間もないが、彼女ことを好きになっていた。
「色々と話してくれたけど」私は言った。「それは平気?」
「あなたは子供の頃、私たちに会っているのにそのことを誰にも話さなかった」
「夢を見たと思っていたからだよ」
「そう」と、カーラは言った。「今日のこともきっとまた同じように考える」
「次は何年後に行くつもり?」