小説

『ラプンツェルとハゲ王子』矢鳴蘭々海(『ラプンツェル』)

 足早に立ち去ろうとした彼の腕を、私は思わずつかんだ。玉西さん、いや、美宗さんの体がビクっとして止まった。
「……しばらく、このまま歩きましょうか」
「はい」
 並んで歩き出した私たちの前には、西日に照らされた影が――丸い頭と長い髪のシルエットが――ぴったりと寄り添うように長く長く伸びていた。そのずっと先にある、高い塔みたいな私のマンションまで届きそうなほど。

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