ゲーセンから玉西さんと私が出ると、西日が地面を明るく照らしていた。玉西さんが目を細めて顔を背ける。
「うわ、まぶしい」
横から飛んでくるハゲ光線もまぶしい。
「とんだ散財でしたね。まさかあんなに使うとは」
「でもすっごく楽しかった。コレ、大事にしますね」
私はそう言うと、ネコのぬいぐるみを目の前にかかげた。通算三十回目にして取れた本日の収穫。あの女子たちに見せつけたかったのだけれど、気付いたら姿を消していた。
「でも、本当に私がもらっていいんですか?」
「僕は取れたことでスッキリしたから。感謝の気持ちです」
「嬉しいけど、コレ見る度ゲーセンに行きたくなっちゃうな」
そう言うと、玉西さんはモジモジして顔を背けた。
「その時は……誘ってもらえれば、一緒に行きますよ」
「へえ!?」
私が素っ頓狂な声を上げると、玉西さんは慌てて手を振った。
「嫌なら無理にとは言いません」
「……じゃあ、今度は一緒にプリクラ撮りません?2回目のデートに」
笑って言った私の頭上で、光る頭がコクコクと上下に動いた。
「あ!新企画思いついたんですけど、『プリクラ肌を作るファンデーション』ってどうですか?すごい美白効果がありそうでしょ」
「野田さんって想像力豊かですね。今度詳しく聞かせてください」
他にも色々話したいことが出てきそうだと思ったとき、心に一つの疑問が浮かんだ。
「そういえば、玉西さんの下のお名前、聞いてなかったですね」
「……絶対、笑わないって約束してくれますか?」
「大丈夫ですよ。焦らさないで教えてください」
玉西さんは一呼吸置いて言った。
「ヨシムネです。『美しい』の『美』に、ウ冠の『宗』で『美宗』」
「ククク……なんか、殿みたい」
こらえきれずに笑った私を玉西さんは睨んで言った。
「もういいです。あなたとは二度と会いません」
「ごめんなさい!もう笑わないから許して!」