小説

『常春の国』金子葵(『桃花源記』)

「その桃、立派でしょう。うちが越してくるずっと前からあるのよ。」
 座卓に置かれた若葉色の煎茶から、やわらかな湯気が立ちのぼる。
「・・いただきます。」
 ツキコは花咲いたように微笑んだ。

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