「あんたなんかがお城に現れたら、王子様に迷惑がかかるわ」
「でも、女性は皆参加するようにって…」
「ハッ。女性?あんたみたいな男女、どこをどう見たら助成に見えるって言うんだい!」
「生まれたときにお医者様が私は女の子だって」
「それがなんだっていうんだい。私には薄汚い使用人にしか見えないんだよ!いい加減その減らず口を閉じなさい!…死人に口無し」
「え?」
「いっそ永久に口を閉じてしまいたい。まぁでも、あなたとの生活も後数日ね。せいぜい孤独死しないようにすることね、この男女!あんたは絶対に舞踏会には行かせないわ!」
…私は、醜い。髪は天然パーマでモジャモジャ。肌は連日の水仕事や深夜の針仕事でボロボロ。肉体労働も日々こなしているため、筋肉ばかりが発達した太い腕や足。体毛は生まれつき濃ゆめ。こんな私を、女性として、1人の人間として見てほしいと思うのは、わがままなのでしょうか。
「…ハァ」
行けるわけがない。頭でわかっているのに、心が受け入れていない。その証拠に、私は深夜の屋根裏部屋で端切れを使ったドレスを塗っていた。自室の屋根裏部屋は月明りのみ。針に糸を通すのも一苦労。
「良い年したババァが楽しそうに着飾るさまは愉快」
急に月明りが消えたかと思うと、いつか聞いた声が聞こえた。
「屋根裏部屋で使い道の無いドレスを作るのは楽しいですか?」
「ここは三階です。どうやって入ってきたんですか?」
「舞踏会でしたか?女性が着飾れる機会は成人式か結婚式くらいですし、舞踏会に参加できないとしてもこの薄暗い屋根裏部屋でドレスを着たいと思うのは女性のさがなんですかねぇ」
「あなたは何者なの?」
「それにしても、また随分と地味な色みのドレスを作っているんですね。古着をリメイクですか?」
「大声出して人を呼びますよ!」
胸に刺さる言葉を止めたくて、つい大きな声を出していた。そんな私に、派手な男性は少しだけ黙った後に続けた。
「なぜ三階の屋根裏部屋にいるのか知りたいのなら、あなたが先にこんな場所にいる理由を話すのが筋」
「え?」