小説

『カボチャの馬車にお邪魔』洗い熊Q(『シンデレラ』『ぶんぶく茶釜』『金の斧』)

「何? どうしたの、何っ?」と不安げな彼女を見てぶんぶくが聞いた。
「あのっ、あの、零時になったらかけた魔法が全部解けてしまう筈じゃ……」
「あ、そうね。そう和田さんのメッセージにも書いてあったわね」
「でも、だいぶ時間を過ぎてしまっているような……」
「大丈夫よ、大丈夫。多分、アディショナルタイムなんでしょ? より緊迫感を高めるとか何とかで」
「あ、あでぃしょなる……」
「あの和田さんがかけた魔法だよ? いい加減に決まってるじゃん。それにどんだけ正確な魔法よ、午前零時ぴったりに効果が切れるなんて。電波? 原子? GPS? どんな正確な時計内蔵よ。もしかしたら午前も午後の判別もつかないアナクロな時計で実は午後の零時でした~て……ああ、和田さんなら有り得るな」
「は、はぁ……」
「それにね、あのね、こう言ったお話の中ではね、だいたい時間なんて良いように変えられるんだから。一秒とかコンマ秒の世界ででよ、俺はあの時は……て回想の世界をね、ぶわわぁぁ~と三十分番組の三分の二を占めちゃうような、そんな回想しちゃんだよ? 幾ら原作に追いついちゃうからと、その間に空中で留まっている人にとってはいい迷惑だよ? 辛いんだよ? それが二週に渡るなんていったら悲惨だよ?」
「さっきから何を言ってるんですか!?」
「第一、あの和田さんがこんな高等な魔法かけられるなんて信じられる? 見窄らしい服とかさ、生の食えなくなっちゃったカボチャやネズミをさ、こんな綺麗なドレスやら立派な馬車や運転手に変えられるなんて怪しいと思わない?」
「えっ……いや、ちゃんと服は触れるし、馬車も走っているし……」
「いやいやいや。もしかしたら騙されてるかも、幻覚かもよ? 実際、端から見たら私たち、腐ったカボチャと小汚いネズミを抱え、息切らせながら一生懸命走っているだけかもよ?」
「そ、そんな訳はっ! それに私が魔法をかけられた時、貴方は居なかったじゃないですか!?」
「いやいやいやいや、わからんよ。私に送ってきたメールに魔法がかけられていて、それを見たら幻覚にかかるとか……あ、でも、そんな高等な魔法が出来るんなら始めっから幻覚なんてしないか……いや、それとも和田さんは優秀なハッカーなのか? アマテラスとかいう集団の一員か?!」
 う~んうんと考え込み始めるぶんぶく。もう、訳のわからん話で絶句状態のシンデレラは言い返す気力も無くしてる。
 悩み込んだぶんぶくが首を傾げて視線が下を向いた時、目に入ったのは彼女が履く片方だけ残ったガラスの靴。
 キランと目を輝かせてシンデレラに聞いてきた。

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