小説

『王様の選択』室市雅則(『裸の王様』)

 驚いて王様は進行役の前に出ました。
 な、何してん!
 王様!実は私も衣装を新調しましたー!
 大臣は両手を大の字に広げ、くるりと一回転しました。
 どうですか?王様!
 ほんまにすまん・・・。ほんまに・・・。
 そこに女性の悲鳴が響きました。
 そちらを見ると進行役を筆頭に、パレードに参加した家来たちが一斉に服を脱ぎ始めています。
 私も!
 私も!
 私も!
 家来たちもパンツ一丁になりました。
 みんな・・・。
 王様の視界は涙でぼやけました。
 今度は別の方向から女性の悲鳴が響きました。
 そちらを一同で見ると町の人々が服を脱ぎ始めております。
 わしも!
 俺も!
 あたしも!
 うちも!
 僕も! 
 ワン!
 ニャー!
 老いも若きも男も女もみんな下着姿になりました。
 みんな・・・。ありがとう。ほんまにありがとう。
 王様がそう叫ぶと、一瞬の静寂が訪れました。
 そこに子供の声が響きました。
 王様は裸や!みんな裸や!
 王様も負けじとその子に言い返しました。

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