「でも」
「いいから座れよ。中道日和らしくないなあ」
「中道日和らしい、ってどんなよ」
むっとして言い返すと「そうそう、その感じが中道日和」と笑った。心がぎゅうとしばられて固くなっちゃうようなあざける笑いじゃなくて、ほんものの、ふっとくちびるがほころぶようなそんな笑いに久しぶりに触れた気がして、日和はまぶたが熱くなった。
こんなことで泣くなんてだめだぞ! と自分をしかりつけ二人から少し離れた所に座った。
「ところでなんで炎上中なの? 中道ってあんまり群れてないしゴーイングマイウェイの人でしょ? 何をやらかしたの?」
「はあ?」
思いがけず力が入っておにぎりをくるむのりをべりっと破ってしまったのを見て、塚田君が吹き出した。
「不器用」
「これは、たまたまです」
うんうん、たまたまね、頷きながらまだ笑っている。箸が転がってもおかしい年頃の女子高生じゃあるまいし、このくらいのことでそんなふうに笑わないでよ、と思いながら破れたのりをおにぎりに巻いた。
「で、中道、何やったの?」
「別に何もしていないけど」
「何もしていないのに嫌がらせされてんの?」
「嫌がらせって。そんなにはっきり言わなくてもいいでしょ? だいたい半分は新のせいなんだから」
「オレのせい? なんで? どういうこと?」
「この間、転んだあたしを助けてくれたでしょ?」
「そのせい? まあっ。モテるって罪ね。やっかみ女子のヤキモチの炎は厄介だから」
「おちゃらけていないで真面目に聞いてよ。あたしも、その、悪かったと思っているの。せっかく新が助けてくれたのに塚田君の方がよかったとか言っちゃって」
塚田君が困った顔をした。新も、バツが悪そうな顔になっている。日和はうなだれたまま続けた。
「そりゃ、新のファンも塚田君のファンも怒るよね」
「え、両方? なんで?」
「その心はずうずうしい……ってことだと思う」
「なるほど」
そこで納得するのかよ、と言いそうになった時「ばかばしい」と塚田君が吐き捨てるように言ってパンの袋をぐしゃぐしゃと丸めてレジ袋に突っ込んだ。