「お昼御飯、食べに」
「いっしょに食べないの」
「ありがとう」
いつもと変わらない梨花にじんとした。
「でも、あたしといっしょにいない方がいいよ」
購買部へ行ってもどんどんつきとばされていつまでたっても何も買えなかった苦い経験から、登校途中にコンビニで買ったおにぎりやサンドイッチを持って日和は非常階段へ向かった。正面側は日当たりもいいし校庭がよく見えるせいか、どの階にも人がいる気配がした。女子の笑い声が聞こえたからあっさりあきらめて道路側に面している裏側の非常階段の方に回った。
「さすがに誰もいないわ」
ほっとして階段を上がっていく。誰もいないと心安らぐ。
「わ」
ぐるんと階段を回ったところで日和はおにぎりを落としそうになった。階段に塚田君と新が並んで座ってもそもそパンを食べていたのだ。
ども、というように塚田君が軽く頭を下げたから、あわてて日和も頭を下げ返す。
「どうしたの、中道さん」
「いや、お昼を」
「ここ、座る?」
新が自分の隣を指してから「あ、そうか。塚田王子の隣の方がいいか」とわざとらしく移動しようとした。
「いい、いい。ひとつ下に行くから」
「べつにいいじゃん。いっしょに食べようよ」
「いや、これ以上」
言いかけて口をつぐむ。
「ああ、炎上中?」
知っているんだ、と日和は唇をかんだ。そうだよね、気付くよね。
「心配しなくても、誰も来ないよ」
「でも」
「どうぞ」
塚田君が場所を開けてくれた。