「っつーかあんた、隣のクラスじゃん。ここ、三組だよ」
「知ってるよ」
「そこは知ってんのかい」
「コントやりに来たんじゃねーんだよ。なんなのおまえ。こんなすげー机に座って平然として意味わかんねえ」
「消すの面倒臭いじゃん。消してもまた書かれるかもしれないし」
「さすがだね。中道日和。おまえって昔から堂々としていたよな。小学生の頃から全然変わんない」
「あんたが変わりすぎなだけでしょう。
その変わりようにびっくりだよ」
「へえ?」
新は、日和の前の山田の席に日和の方を向いて座った。
「オレのこと、ちゃんと見てたんだ」
「はあ?」
「だってそうでしょ、おれが変わったこと知ってるってことは」
「だれだって知ってるよ? つーかもう見たとたんわかるでしょ? でもなんで王子なんか目指してるわけ?」
「お前に助けられたから」
「はい?」
「ちいさいころ、オレは泣き虫でよくいじめられていたじゃん? おまえは弱いものをいじめるやつは心が弱虫なんだと言った」
言ったかな? 言ったかもね。思ったことはとりあえず口に出す。だからしょっちゅうけんかになった。
「おまえのそのばかげた男らしさを尊敬している」
「はあ?」
「でもできれば昔お前が守ってくれたようにオレも守ってやりたい。お前とは違う方法で」
新は立ちあがった。
「それでこうなった」
「ええ?」
「だってモテない泣き虫男のままじゃ守れないだろう?」
「やるね、古川新!」
梨花が拍手した。
「よかったね、日和」
「待って。別によくないよ?」
「だってあんたいつも新のこと見てたじゃん。何見てんの? ってのぞいたらいつも古川新がいたもん」
「それは、だから、どうして変わったのか不思議で」
「気になって、でしょ? それってつまり好きってことじゃない」
「それは、ちがうよ。あたしは全然変わらないのに、変われないのにどうして、って気になって」
「気になるはイコール好き、だよ」
「イコールじゃないよ」