「では、評議会を閉会する」かんかんかんと木槌を鳴らす。閻魔が席を立って扉を開き、退出を促す。
「まさか、天国にも地獄にもいかないなんて。こんなことあるんですわね」
「ふふふ。恋は天国も地獄も兼ね備えている。丁度良い結論ではないか」
「恋かあ。不合理よね」
「……マッチ売りちゃん見てると、天国も退屈そうですわね」
みんな続々と退出していく。あるものは天国に、あるものは地獄に。天国と地獄の分かれ道。だが分かれ道は常に三本ある。そう、来た道があるのだ。
「ぐるる……こんな評決、有りえるのか」
閻魔が不敵に笑いながら答えた。
「なんだって『ありえる』さ。人間は可能性に満ちているからな」
Kが一人、座ったまま資料を見ながらぽつりとつぶやく。
「……そういえば、人魚姫の名前はなんというのだろう」
他人に興味を示すのはめずらしい。人魚姫の名前は、きっと希望にあふれる素敵な名前よ、と魔法使いが肩を叩いて退出した。