「もう八時よ。いい加減起きなさい!遅刻するわよ!」
私を起こす母の声が聞こえる。もそもそと体を起こし、ぼんやりと目線の先にあるものを眺める。いつの頃からか私は夢を思い出すのが習慣になっていた。全てを鮮明には思い出せない。でもポツン、ポツンと思い出せた冒険の切れ端をつなぎ合わせていくあの感覚が私はたまらなく好きだ。
「何ぼんやりしてるの?」
文字通りぼんやりとしている私を矢継ぎ早に問い詰める。
「最近、よく同じ夢みるんだよね」
「どんな?」
さして興味もなさそうな返事だが私は一応説明する。
「走ったり、デートしたりする夢」
「走っちゃうんだ」
「そう。ピューって。走るって超楽しいけどやっぱり夢の中でも、あ、空飛べばいいじゃんって思っちゃう自分がいるんだよね」
夢って人に語るとつまらないものになっちゃうんだな、なんて思いながら私はぼんやりとした。
「ハイハイ。夢語ってる暇があったらさっさとゴミでも漁ってきなさい。隣の地区へ行くのよ。もうあそこしか緑のネットじゃないんだから」
「えーっ嫌だよ。あそこ人多いんだもん。」