そう言って慌ただしく帰って行きました。
部屋に戻ると、ハル君のお母さんは、手に乗せた人形をしばらく見つめて居ました。やがて、人形の髪をそっととかすと、
「最近ずっと、こうしてあげられなくてごめんね。でも、もうすぐ、あなたも遊べるようになるかもね。」
そう言って、お人形を棚へと戻しました。
そして、ハル君の方へと振り返って、こう言いました。
「ハル。あなたも、もっとしっかりしないとね。春にはお兄ちゃんになるのだから。」
お人形は、お母さんのお腹に、たしかにお姫様を見ました。