小説

『冷蔵庫の中の女』洗い熊Q(『雪女』)

 僕は暖炉に薪をくべる。
 広く、天井の高い居間の顔のようにある大きな暖炉。古びているが暖かさは別格だ。
 居間は大人数が集えるくらい広々している。だから暖房の斑がないよう円柱型の石油ストーブも設置されている。
 ランプのような籠もりとした照明の明かり。薄暗い部屋に薄らと写る暖炉の火の揺らぎ。
 一人で居るのが勿体ないと思う雰囲気。ここを見るとそう思う。
 薪は十分なほど室内に入れた。
 無くなれば外にまだまだある。
 石油も充分。予備も用意されている。食料もある。
 この天候が続いても、数日は閉じこめられても大丈夫。
 ――そう思うほど外界の天候は酷さを増していた。先ほど外を見たが、雪も深い所で腰の高さまで来ていた。
 一度、叔父に電話をして置いた方がいいか。大丈夫な事を。
 でも予報通りなら朝に吹雪は止む。そうなれば明日は朝からカントリースキーを楽しむのには絶好な日になるだろう。
 そんな事を思いつき、板の手入れでもしておくかと思い立った時だ。
 ――トン、トン、トン。
 聞き慣れた音が室内に響いた。
 玄関のドアノッカーを叩く音。独特の響きで、こう雪の日の室内にはよく聞こえる。
 鳴らされた事、誰かが訪れてきたかも知れない。驚きはしなかった。
 それほど突然の訪問というのはここではよくある事。
 玄関扉に近づき、僕は外に大きめの声で呼びかける。
「は~い、何かご用でしょうか?」
 この天候の悪化の最中、人が来る事は不振には思った。でも大抵にこの状況なら何かしら助けが必要な人だとは察する。
 相手の返事を待たず、僕はゆっくりと玄関を引き開ける。
 強烈に冷たい風。吹き込み、部屋の中に舞い上がる粉雪。
 思わず目を細めて見つめた玄関先に立つ人。
 紺色のダッフルコートのフードを深く被った女子。そう女子高生だった。
「えっ……」
 僕は思わず口に出し驚いた。

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