「ありがとうございました」
立ち上がって礼を言う少年。
「……ちゃんと、思いは告げられたのかい?」
ゴッドマザーは、素っ気ない口調で尋ねた。
「いいえ」
「え?」
「だって、オーケーしてくれたんてすよ。ても、あの子は必ず『ありがとう、でもごめんね』と言うはず。本物の、リゼなら」
「そうか……すまないね、ぼうや」
「いえ、お気持ち、ありがとうございます」
下がった眉尻の少年の言葉に、ゴッドマザーは少し後悔した。
幻覚の中では、告白は成功したようだ。それが少年の望みだからだ。しかし、少年の本当の願いはそれとは違い、相手の幸せを、より強く望んでいるようだった。そうでなければ、彼は幻覚を、現実として受け入れただろうから。
「どうしようかねぇ……」
間を繋ぎつつ、左手を自分の頬にあててゴッドマザーは考えた。
本物のリゼは既に死んでしまっている。
その事実を、少年に告げるべきだろうか。それは酷ではないか。
しかし、今伝えなくても、そのうちこの少年は、リゼの死を知るかもしれない。
赤いバラを、リゼに捧げればいいだろうか。
少年の想いは、天国へ行った、かわいそうな少女に伝わるだろうか?
ただ、それには少女の死を、この背の小さな男の子に教えなければならない。
それで、彼は想いをとげられるだろうか。
先刻の幻覚魔法で、MPも尽きた。
でも、MPがたとえ満杯でも、少女を救う事はできない。
ということは、少年の願いをかなえることもできない。