焼酎もツマミも減り、三人とも顔を赤らめながら気持ち良さそうに楽しんでいる。
「ここまでしても母さん、出て来ないんだな」
横目でドアを確認しながらの秀樹。
浩一が笑いながら呟く。
「中で死んでたりして?」
発言者の浩一を含む全員が思わず息を飲んだ。
ここまで誰も思いついていなかった。
秀樹が慌てて立ち上がり、ドアを叩く。
「母さん、大丈夫か?生きているのか?生きていたら返事くらいしてくれ」
一同がドアを注視する。
トン。トン。
ドアの向こうから二度のノック。
安堵のため息を吐きながら、元いた位置に座る秀樹。
「ああ、良かった」
焼酎で口の乾きを潤す秀樹。
浩一と彩も同じように焼酎を一口含んだ。
「浩一、ドキっとしたけどナイスだったぞ、この野郎」
秀樹は敦子の安否確認の緊張が解けたせいで酔いが一気に回ったようで、浩一の肩を組んで来る。
笑って秀樹の手を払おうとする浩一。
「止めてくれよ。俺もう・・・三十だよ」
「何言ってんだ。年なんて関係ないだろ。浩一は彩よりオムツしてたくらいなんだから、きっと、ちょっとスタートが遅いだけだ」
「え、マジで?」
浩一が秀樹を見ると秀樹は笑いながら肩を掴んだ手の力を強めた。
「そうだよ。なあ母さん!浩一の方がオムツ外せなかったよな。彩の方がお姉さんみたかったもんな」
「本当は私がお姉さんなんじゃない?」
「そうかもしれないな」
浩一が真面目なトーンで呟くと三人は顔を合わせて大笑いした。