そのうちあたしも村を出て、都会の学校に行くようになって、まるであの夜のことは夢か何かだったみたいで。あたしもいつの間にか、カグヤちゃんのいない生活が当たり前になって、そのまま大人になって。
うん。
だけど、この間、ニュース見て。
うん。あいつの白骨死体、見つかったんだってね。
それで、ああ、あれは夢じゃなかった、本当だった、本当にあったことなんだ、あたしは本当に、この手で、カグヤちゃんを。
そうだね。
カグヤちゃん、あたし、ずっと思ってて、あたし、謝りたくて、だって。
ね、ちぃ、ありがとう。
え?
わたしを忘れないでいてくれて、ありがとう。
「――え、ねえちょっと、大丈夫?!」
グラグラと頭を揺さぶられて、あたしはゆっくりと目を開ける。
薄暗い空。竹が高く伸びた影。ひんやりした空気、土の匂い、湿った背中。
「――運転手、さん?」
「カグヤちゃん!気が付いた?」
仰向けに倒れたあたしの体を、タクシーの制服を着た青年が起こしてくれる。松本、というネームプレートがかろうじて読み取れた。そういえばカグヤちゃんが言ってたっけ、同級生のタクシー運転手。
そうだカグヤちゃん――カグヤちゃんは何処だろう。慌てて辺りの薄暗がりを見渡してからはっと我に返る。
何考えてるんだろう、あたし。
カグヤちゃんはもういない、だって、あの時あたしが。
ぐい、と手を取られて思わず声を上げそうになる。
「大丈夫?」
松本くんがあたしを顔を心配そうに覗き込むので、何とか頷いてみせる。その間に松本くんは何故かあたしの手のひらをグニグニと握り、脈まで取ってから、うん、生きてる、生きてる――と呟いた。
「え、あ、うん……何、してるの」
「や、なんていうか、確認?」