シャイな一面もある。
「堂々としろ。ご本人様の大登場なんだから」
弟の顔が明るくなった。
「そっか、行こう」
弟はそのままサンダルをつっかけて出て来ようとした。
「バカ、ズボンくらい履け」
「ああ、そうだそうだ」
一度部屋に引っ込んで、半ズボンを履いた弟と駅に向った。
駅前の野次馬たちの多さは相変わらずだった。
「通りますよ」
俺たちの花道を通り、一番前に出るとあの警察官が驚いた。
それはそうだろう。
当人を連れて来たんだから。
「連れて来ましたよ。弟です」
「どうも、こんにちは。あの、死んじゃったようで。お世話になっています」
「同じような人が増えちゃったな」
野次馬たちが笑った。
「あれかい?俺は?」
「ああ、近くで見て良いですか?本人ですから」
警察官を立てた人差し指をこめかみの横で回している。
俺たちはアスファルトに横たわっている弟に近付いた。
若干臭う。
この暑さだ。どこかが腐り始めているんだろう。
可哀想に。
まじまじと眺める。
死人の色。
生気を欠き、皮膚が鑞のような鈍いツヤを帯びているが俺であり、弟である。
野次馬たちは固唾を飲んで俺たちを見守っている。
「な、お前だろ?」
「兄ちゃんの言う通りだ。俺だ。でもさ」
弟が殴られて腫れた目で俺を見た。
「何だよ?」