小説

『こぶとり坊や』酒井仐(『こぶとり爺さん』)

「たん、たたん、たん、たん」
 高くて大きな音が鳴り響く。体全体を芯から貫くような音。空から直接響くような音。
「な、ええだろ。一緒に混ぜて、叩いてみい」
 隣の家の坊やは叩いてみる。
「ぶおぶぶん、たん、ぶるん、たたん、ぶるん、たん、ぶるん、たん」
「ずんばらしいに。ずんばらしいだろ?」
 隣の家の坊やは輝くような笑顔で「うん」と言う。

 坊やを見ると、どうしてか泣きながら笑ってる。
「いいぜ。いいぜ。最高だ。だ、だ、だ」
 坊やは手をあげる。隣の家の坊やも手をあげる。
 ふたりで手を合わせる。
 パチン、と音が鳴る。

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