小説

『カブオレポート』五条紀夫(『おおきなかぶ』)

 妹も言う。

「そうよお父さん、ひどいわ!」

 父は冷静に反論をした。

「聞いてくれ、『大きなカブ』だよ。今の状況は、まるで絵本の大きなカブのようだと思わないか。あれこそ、家族一丸の見本だと思うんだ。つまり、あの絵本を見習えば良い」

「あなた、見習うってどういうこと?」

「そうよお父さん、ひどいわ!」

 父は説明を始めた。

「大きなカブでは、まず、お爺さんがカブを引っ張った。続けてお婆さんが、次に娘が。今の状況がまさにそうだろう? では、次に物語ではどうなっている?」

「あなた、そう言われても分からないわ」

「そうよお父さん、ひどいわ!」

 父は誇らしげに言い放った。

「犬だよ。次は犬の番だ」

 さっそく父に指示された母が、飼い犬のポチを連れてくる。
扉の前にやってきたポチに対し、父は諭すように語り掛けた。頼むぞ、と。
 その言葉を聞いたポチの姿は、心なしか頷いたように見えた。

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