小説

『エレベーター』木江恭(『銀河鉄道の夜』)

 テツ。お前も、下行きのエレベーターを待ってたんだろう。だったら俺も一緒に連れていってくれ。
 俺を、連れ戻してくれ。
 音川は必死に目をこじ開ける。
 力を失った体は仰向けに転がって、音川はもう地上を覗き込むことができない。透明なガラス越しに見上げる空は真っ白で、太陽を仰いだときのように強い光が目に突き刺さる。
 ――ポォォン。
 柔らかな響きが、音川の耳を打つ。
 エレベーターが、減速する。

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