テツ。お前も、下行きのエレベーターを待ってたんだろう。だったら俺も一緒に連れていってくれ。 俺を、連れ戻してくれ。 音川は必死に目をこじ開ける。 力を失った体は仰向けに転がって、音川はもう地上を覗き込むことができない。透明なガラス越しに見上げる空は真っ白で、太陽を仰いだときのように強い光が目に突き刺さる。 ――ポォォン。 柔らかな響きが、音川の耳を打つ。 エレベーターが、減速する。 10/10 前のページ 3月期優秀作品一覧 HOME 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10