小説

『霧の日』化野生姜(『むじな』)

恐らく心配性の父と一緒に。
そうして俺が四つ目の枝豆に手を伸ばしたころで、玄関の戸が開く音がした。
俺は、玄関に向かって声をかけた。

「坊、おかえり。爺さまを先に上げてあげなさい、疲れているはずだから…。」

そうして、息子と父が手を洗って居間に来ると、息子が何かもの言いたげな顔をしていることに気がついた。
どうしたのかと聞くと、息子は困った顔で俺に言った。

「父ちゃん。僕、よその子なの?うちの人が時々知らない人に見えるんだよ。」

俺は、その告白を聞いて笑ってしまった。
懐かしかった。
自分も、息子くらいの年には同じことを言っていたのを思い出した。
そうして、俺はあのときと同じように息子に優しく教えてやった。

自分も昔はそんな風に感じていた時期があったこと。
誰しもそれは体験することを。
気にすることなんてないということを。

俺はそんな忠告をビール片手に話してやった。
父も、同じように孫に優しい言葉をかけていた。
俺はビールを飲むと枝豆をまた一つ、つまんだ。
息子はなんとなくほっとした表情でそれを聞いている。
その顔を見て、俺と息子は血の繋がった親子だなとしみじみ感じた。

ちょうど、そのときだった。

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