小説

『裸の王様』anurito(『裸の王様』他)

 とんでもない話だぞ、とアール氏は心の中で思った。今起こっている出来事は、まさに、宇宙人との栄誉あるファーストコンタクトである。その素晴しい地球代表として、自分たちの国が選ばれたと言う事なのだ。地球の中でも特に先進国家だと判断してもらえたようなのである。
 しかし、若者の話はまだ終わってはいなかった。
「でもですね、宇宙進出する惑星人が全て銀河連邦に加入できる訳でもないのですよ。まだ宇宙のルールを自主的に守れないような野蛮な生物のようでしたら、銀河連邦への参加は見送らなくてはいけません。銀河連邦のメンバーでなければ、当然、宇宙を飛び回る事は許可されない訳で、その星の住民の宇宙進出は銀河連邦の実力行使によって阻まれる事になります。つまり、その星の生物は、宇宙へ乗り出す事が完全に出来なくなってしまうのです」
 アール氏はギョッとした。
「こ、この星、地球はどうなのですか?あなた方がこうして会いにきたと言う事は、もちろん、銀河連邦への参加を認めてもらえたと言う事ですよね?」
「いいえ。私たちは、銀河連邦の最終調査員です。この星の知的生命体であるあなた方が、本当に銀河連邦に加入できるような、知能も高く、性質も善良な生物であるかどうかを、最後のテストを行ないに来たのです。そのテストの実施のために、あなた方にちょっと協力をしてもらいたいのです」
「協力ですって?何か、機械にでもかかって、知能指数でも計るのですか?国のトップである大統領か私が、その機械にでもかかれと?」
「違います。少数のサンプルではなく、種族全部の知性指数を調べる事ができる、良い方法があるのです」
 そう言って、銀河連邦の若者は、両手を広げ、自分の耳もとまで、その両手を持ち上げた。そう、アール氏の目には、確かに、そのようにしか見えなかったのだ。
「あ、あの・・・」
 アール氏が困惑して尋ねかけた時、その声を銀河連邦の若者がさえぎった。

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12