小説

『裸の王様』anurito(『裸の王様』他)

「君、いきなり、どうしたのだね?今はミーティング中だぞ」
 と、アール氏が秘書官をたしなめた。
「それが、今すぐ大統領にお会いしたいと言う方々が玄関に現れまして」
 秘書官が言った。
「その人たちはアポはとっていたのかね?そうじゃなければ、追い払いなさい。それが、君の仕事だろう」
「でも、何やら、おかしな感じの人たちなのです」
「かまわない。今日は、これから大統領も急がしいのだ」
 厳しく言い切るアール氏を前にして、秘書官はしぶしぶ部屋から出て行った。
「その必要はありませんよ」
 と、澄んだ男の声が聞こえてきたのは、秘書官が出て行ったのと、ほぼ同時だった。
 ハッとしたアール氏が、声の方に目を向けると、部屋の片隅には二人組の若者がたたずんでいた。二人は、一見、全身タイツのようにも見える、おかしな服を着込んでいた。
 大統領も、あっけにとられて、二人の男の方を眺めていた。
「君たちは誰かね?一体、いつ、この部屋に入ってきたんだ?」
 動揺を隠しつつ、アール氏は男たちに問いかけた。
「失礼。会ってもらえなさそうなので、勝手に入りこませてもらいました。あなたたちは、この国の代表のものですね?」
 男の一人が、抑揚の無い口調でそう言った。
「まずは、君たちが名乗りなさい。不審な事をするなら、すぐシークレット(警備)を呼ぶよ」
 と、アール氏。
「私たちは、銀河連邦の調査員です」
 と、もう一人の男が言った。
「銀河連邦?新しい政治団体かね?それとも、新聞社か何か?」

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