小説

『トマトジュースは健康に良い』祀水(『ヘンゼルとグレーテル』)

「美味しーー!!」
 お兄ちゃんに背負われて家まで辿り着いた妹ちゃんはお菓子の甘い匂いに目を覚ましました。姉と妹は木に生っていたクッキーとチーズケーキをお皿に載せ、汲んできたばかりの水で淹れたミルクティーを添えて二人の前に出しました。きょうだいはお腹がすいていたのでしょうか、ペロリと完食して満足そうなため息をついたのでした。
食べている間、いろいろな話をしました。姉妹は扉を通ってここに来たこと。食糧は基本的に木に生っているお菓子であること。もう半年ほどここに住んでいること。きょうだいは気がついたら森にいて、それ以前のことは何も覚えていないこと。行くところもないので良かったらここに置いてほしいということ。
「まぁ、じゃあ家族が増えるのね!」
「うわぁ初めてあたしに弟と妹ができた!」
 ずっと二人で暮らしてきた姉妹にとって、新しく出来たきょうだいはことさらに嬉しいものでした。きょうだいも、初めてできたお姉ちゃんたちに大喜びです。こうして、姉妹はきょうだいと暮らすことになったのです。

 お腹がいっぱいになって、話しているうちに眠くなったのでしょうか。きょうだいは椅子に座ったままうつらうつらと船を漕ぎはじめました。
「あはっ。ねぇお姉ちゃん、この子達寝ちゃった」
「あらあら。私たちのベッドを貸してあげましょうか」
 姉妹はニッコリ笑って、きょうだいのあどけない寝顔を眺めていた、その瞬間。今まで感じた何倍もの強烈な眩暈が二人を襲いました。まるで金属バットで頭を内側から殴られたかのような衝撃でした。抗うことのできない二人はそのままバタリと倒れて意識を失いました。

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