「お姉ちゃん!! スゴイよ! これ住めるんじゃない?」
「そうねぇ……中はどんなのかしら」
注意深く辺りを観察しながら扉をコンコンと三回ノックしました。ですが、いつまで経っても返事が返ってきません。
「誰もいないのかしら? ……お邪魔しまぁす」
そろりと扉を開けてみると、まず目に入ったのが大きな木を輪切りにしてこしらえたテーブルです。下には背凭れのついた木製の椅子が二つ、向かいあわせに据えてありました。奥には一握りの灰もないまっさらな暖炉が、隣には木製の食器棚があり、扉を隔てた左の部屋はふかふかのベッドが二つ並んだ寝室、右のスペースはキッチンになっているようでした。
そして家具にはそれぞれに細かな装飾が施されていました。
「わぁ可愛い」
「すっごーい! ここって誰もいないのかな?」
「こんなに綺麗なんだもの、誰か住んでるんじゃない?」
「あーそっかぁ、残念。誰もいないんだったらあたし達が住めたのにねー」
「人様のお家を取るわけにはいかないわ。残念だけど」
「でもさ、今日くらいは泊めてもらおうよ。そろそろ暗くなってきちゃったし。ここの人が帰ってきても、事情を話せばきっと分かってくれるんじゃない?」
「うーん……今日だけなら大丈夫かしら…」
二人は話し合った末、今日だけ家を借りるということで落ち着き、二つあったベッドにそれぞれ潜り込みました。幾年かぶりの清潔で柔らかいベッドの感触に、二人は夢も見ないほどにぐっすりと眠ったのでした。
次の日、森を見て回ろうと二人は出発しました。
しかし、行けども行けども木しかありません。お昼に木の根元に座って、生っていたミートパイを食べた以外は一日中歩き回っても何も見つけられませんでした。
仕方なくまたあの小屋に厄介になったのですが、それが二日続き、一週間続き、その間家主が帰ってきたことは一度もありませんでしたので、二人はいつの間にかにそこに住みついたのでした。
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