小説

『トマトジュースは健康に良い』祀水(『ヘンゼルとグレーテル』)

「なにこれ美味しい!」
「スゴーイ! 初めてだよこんな味!」
 食べてみて二人は驚きました。
 思わず、大切に持っていたトマトを落としてしまったくらいです。
 それは今まで食べたこともない極上の味がしたのです。
 二人は味見をしてみたドーナツをペロリと食べ終わると、すぐ隣の木に生っていたモンブランに手を伸ばしたのでした。
「はぁ……美味しかった」
「本当ねぇ」
 あれからあちこち歩き回ってお腹がいっぱいになった二人は再び歩き出しました。
「これからどうしようか、お姉ちゃん」
「もうあそこには戻れないわ。戻れるかどうかも分からないし……。この辺りになにかあればいいんだけれど」
「なにかって?」
「ここで暮らしていけるような家があったらいいわね。食べ物はたくさん生っているし」
「そうだね!」
 あてもなく歩いていると、川が流れているのを見つけました。緩やかな川で、水も澄んでいて飲めそうなほどです。
「川だわ。ますますここに住みたくなるわね」
「わぁ! 綺麗な水だね」
 暮らしていくのに、水は欠かせません。ですから、この川はとっても魅力的なのでした。
「わぁ! お姉ちゃん見て見て!! なんかあるよ!」
 川沿いに進んでいると、並んで歩いていた妹がピョンと前に飛びだしました。
 そこには森が開けた広場になっていました。そしてその真ん中に、古そうですがしっかりしている丸太小屋が建っていたのです。脇には切り株がひとつあって、斧が刺さっていました。

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