「鬼が血に驚いて逃げて行ったぞ」
「妙な話もあるもんだな。ジャガイモが血を流しているとでも思ったのかな」
二人はようやく恐怖と緊張から解放され、笑いながら一息ついた。
しかし、気を抜いたその瞬間、ふいに後ろから声をかけられる。
「そこの二人、一体何をしているのかね?」
二人が振り返ると、暗闇の中、ほんのり灯りに照らされて、年老いた顔が浮かんでいた。
「で、出た!」
二人は悲鳴をあげると、ジャガイモのことも忘れて、慌てて逃げて行った。
「全く失礼な奴らじゃ。人のことを化け物みたいに言いおって。妖怪が死体を数えていると言うから来てみれば……」
さっきの逃げた三人組から知らせを受け、わざわざ確認にやって来た寺の住職は、呆れた様子で言った。そして、提灯で照らしながら周囲の状況を確認する。
「何じゃ、このジャガイモの山は。こんな時間にこんな大量のジャガイモを供えに来るとは妙な連中じゃ。不思議なこともあるもんじゃのう」
そう呟くと、住職は静かに戻って行った。