「まさか、妖怪が死体を数えている?」
「いや、この様子だと分けているんじゃないか?」
「死体を分け合っているっていうのか……」
息を飲む三人。しかし、好奇心もあってか、逃げずにその場に立ち尽くしていた。
一方、ジャガイモを分けるのに夢中な二人の男は、三人の存在に気付かない。暢気にジャガイモを数えながら、ひとつ、またひとつと手に取る。
「おっと、こいつは芽が出ているな」
「くりぬけば問題ないだろう」
「まあ、捨てるには勿体無いよな」
そんな調子の二人である。
しかし、それを聞いていた三人は青くなった。
「目をくりぬくだって? 何と恐ろしい……」
三人が震えていると、また声が聞こえてくる。
「これはひどく虫が食っているな。食う気にならん」
「それはさすがに捨てるしかないだろう」
三人の頭にはおぞましいイメージが浮かぶ。
「ああ……気持ち悪くなってきた……」
そんな三人の気も知らず、二人は楽しそうにジャガイモを分け続けた。
「ところで、お前はどうやって食べるよ?」
「まずは焼いて食べるだろうな。それから汁物なんかに入れてもいい」
「俺は潰して食べるのが好きなんだ」
「ああ、そういえば、地域によっては凍らせてから踏み潰して保存食にするところもあるらしいな」
二人はジャガイモを如何に食すかという話で盛り上がる。それをジャガイモの話だと思っていない三人にとっては、地獄のような内容であるが……。
ふと、ジャガイモを数えていた男の一人が、目の前の墓を見て思い出したように言う。
「そういえば、長者さんが亡くなったのを知っているか?」
「ああ、あの男は食えん奴だった」