ボソボソと話し声。
男なのか女なのかもわからない。
いやいやそれどころか何処なのかもわからないのだ。全てが混沌としていた。そんな世界。いや、云いようのない幻想めいた渦中に
漂う世界。二人ではなく、独白かも。
とにかく、混沌として分からない。
そういった感じは変わらない。
「ある公募要領には、物語には、人の心を動かす力がある。と、書いていたわ」
「その通りだよ！」
「文字の無かった時代、それは人々の口から口へと語り伝えられてきた。と」
「それ常識！」
「文字が生まれると、書物を通して広まる。とも」
「しかり、しかり、しかり」
「映画が誕生し、ラジオ、テレビが発明され、インターネットが普及し・・。って」
「素晴らしき幕開け！」
「その形は多種多様になりましたが、物語の持つ力は、どのように表現されても変わることはありません。だって」
「よく言った！」
「それよりも形を変えることで、変わらないその本質を、より多くの視点から見つめることができるようになったのです。と、まで書いていたわ」
「当たり。すごいよ！」
「まだ続くのよ。物語に様々な角度から光を当て、色々な形でその力を伝えていきたいと思っています。と、ね」
「全く同感だね」
「誰もが知るおとぎ話や昔話、民話などをもとに創作した作品。を、なのよ」
「面白そうだね」
「芥川龍之介はかつて『桃太郎』や『猿蟹合戦』を全く別の視点から描きました。つて」
「ほんとだ」