小説

『老人の恋は冬の花』ふくだぺろ(『メキシコの諺』)

 わたしにつかえるコトバはサルスベリのコトバしかないから、きみにうまく伝わったどうかわからない。でももし伝わったなら、きみの生活を見返して欲しい。そしてどこかにサルスベリの木があったなら、きみが行けるのなら、行ってそっと、幹を撫でて欲しい。その木はわたしであり、おじいちゃんであり、おばあちゃんだから。
 サルスベリの世界はそういう風にできている。
 わたしの幹にはいま、つぼみが沢山なっていて、おじいちゃんが冬に咲かせた花より、マッ赤な花を咲かそうとしている。

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