碓井貞光は金時がいなくなったのを淋しがり東国へ旅立った。そして彼の地で見たものは、山奥のあばら家で暮らす木こりと田舎じみた女房との平凡な暮らしだった。貞光の目には木こりの大きいマサカリと赤ら顔だけが残った。貞光は都に帰ると物語を一つ書き上げた。
主人公は金時らしい人物で、金太郎と言う名にした。これが今の世にまで広く伝わっている金時の話である。実際の金時は前述した通りであったが、なぜか昔書かれた今昔物語には、金時たちが牛車に酔う話しか書かれていない。
私は山奥育ちの牛車に酔うような武骨者でも、都会の娘に恋をして幻を見たことを伝えたくてこの作りものを書いた。