小説

『開かずの座敷』化野生姜(『見るなの座敷』)

その中で、裕也の嬌声だけが喧しい鳥の声のように響いていた。

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その日の夕暮れのことである。
とある旧家から、奇妙な行列が出て行くのが目撃された。

それは、古風な集団であった。
みな、鶯色の羽織袴や着物を見にまとい、笠や手ぬぐいで顔を隠していた。
そこから覗く顔はみな蒼白で、どれも精気を欠いているように見えた。

それはどこかで見たような顔で、この家の住人にも似ていたが、あまりにも様変わりしたその姿に、誰もが最後には他人だろうと言いはった。

やがて集団は、川を渡り、山の向こうへと消えていった。
そこから先は誰も知らない。

…最近になり、とある寺で山の神とともに森で暮らした男の文献が見つかった。それは古い巻物に書かれていたが、その内容を読んだある学者が、件の旧家の場所がその巻物に書かれた森の位置と同じ場所ではないかと、とある学会で指摘をした。

だがそれが、今回の出来事と関係があるかと言われれば、誰もが口をつぐむ。

本当のことは誰も知らない。
何せ、証人がいないのだ。

いまや、あの旧家はただのあばらやだ。
あの日から、あの家に関わる人間は全員行方不明になってしまっている。
誰一人として見つかっていない。

そうしてあの日、あの家に残されたのは、襖の開けられた一つの座敷と、布団に横たわる一人の老人の遺体だけであったのだから…。

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