メロスは腕にうなりをつけてセリヌンティウスの頬を殴った。
「ありがとう、友よ。」二人同時に言い、ひしと抱き合い、それから嬉し泣きにおいおい声を放って泣いた。
面接官は、群衆の背後から二人の様を、まじまじと見つめていたが、やがて静かに二人に近づき、顔をあからめて、こう言った。
「あなたたちの望みは叶いました。あなたたちは、わたしの心に勝ったのです。信実とは、決して空虚な妄想ではなかった。どうか、わたしをも仲間に入れてくれまいか。どうか、わたしの願いを聞き入れて、あなたたちの仲間の一人にしてほしい。」
どっと社員の間に、歓声が起った。
「万歳、就活万歳。」
ズドン。
セリヌンティウスは自宅のテレビでニュースを見ていた。
「厚生労働省と文部科学省はその年に卒業した大学生の就職率が95.2%であったと発表しました。これは前年度より1.7%少ない数値でした。」
セリヌンティウスはテレビの電源を切り、何も言葉を発さず、目をつむってソファに深く沈みこんだ。