小説

『魔法使いとネズミの御者』Dice(ぺロー版『シンデレラ』)

「僕は何歳から始めることになるんですか?」
「まあ、15ってとこかね」
「15歳でこの立派な口ひげ!」
「嫌なら剃りな!」
「そしてこの腹!」
「痩せな!」
 口元に手を当てると、まさにそのひげが指に当たる。撫でてみると、思いのほか感触が気持ち良かった。
「そうすると人生の残りは」
「まあ、25年くらいか」
 ふむ、と少し魔法使いの真似をしてみる。魔法使いは咳払いをひとつした。
 「とりあえず御者にしてもらったので、乗合馬車の御者として、生計を立てます」
 魔法使いの目が、感心したように細められた。
「なるほど。あんた、案外操縦上手かったね」
「若い女も乗ってくるだろうから、適当に可愛いのを見繕って結婚します」
「見繕うって。女にも選ぶ権利があるんだよ」
「選ばれればいいんでしょ?ともかく、結婚して、子供は30匹くらいもうけて」
「いや、そこだけネズミのままじゃないか。人間ならこの時代でも、作れて7,8人だよ」
「じゃあ、男の子1人、女の子2人くらいで」
「そのくらいが無難かね」
「ヤるのは自由だし」
「減点だね」
「あっ」
 ブラウニーは目と口を大きく開いたが、魔法使いはメモをとるのに熱心で、彼を見てはいなかった。仕方が無いのでそのまま続ける。
「そして、子育てに参加しながら、今はほぼ個人で経営されている乗合馬車を組織化して、効率の良いサービスの提供を目指します」
「と、言うと?」

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