つられるようにして少年の背中を追いかけた。アンチドリームシーカーだろうが、ドリドリだろうが、とにかく少年の正体を知りたくて仕方なかった。乱暴な少年の足跡を順次踏み均していく。息切れもなく、疲労もなく、追いかけっこは永遠に続くようだった。このまま朝を迎えてしまうのだろうか。そんな懸念が橋爪の胸にぽつん、と隆起して、しかしその時、ピタリ、少年が足を止めた。振り返って、辺りを見回して、どこにも行こうとしない。何だか薄気味悪く、距離を縮めずに橋爪も辺りを観察すると、ふと、少年の後ろの景色が、まるで緞帳を吊るしたように平面的であることに気がついた。そして直ぐ、その理由を察知した。夢占の付属冊子には、その先の光景が描かれていなかったのだ。
「夢にも行き止まりがあるってか」
自分に言い聞かせるように呟いて、橋爪はじり、じり、少年との距離を詰めていった。
「見てないもんは解らないってな。ドリドリ2でもやっぱりイメージ先行の要素は完全には拭えないのか。まるで映画のようだな。カメラの抜き出す箇所しか見られない。まったくドリドリは妙なおもちゃだ。夢というカンバスにイメージという絵の具を塗りつけて、」
はっ、と閃きに橋爪は歩みを止めた。
「イメージの世界ということは……」
こく、こく、頷いて、それから、ぐっ、と目を瞑った。橋爪は牢屋の想像をした。それはたとえば刑務所のような、拘置所のような、或いは雀を囲っていた鳥籠の、さらに強固で堅牢な、少年を捉える牢獄……。瞼をぎゅう、と閉じるたび、辺りの気配がずるり、と擦れて、ぱっ、と目を開くと、背景は相変わらずの緞帳の森だったが、少年は見事、大きな鉄の鳥籠に収容されていた。
「やった大成功!」
橋爪は思わず両手を上げて喜んだ。しかし途端に最初からそうすれば、という考えも浮かんで、上げた腕で後ろ頭を掻いて体裁ぶった。気を取り直して、
「よし、少年よ。逃げ場はないぞ。何度だって捕まえてやるぞ。正体を教えるんだ。俺のイメージの中を我が物顔で動き回る君は、一体、何なんだ!」
声を荒げると、
「……もう、仕方ないか」