「無理ですね!圧倒的に予算が足りません。人間は人件費がかかりすぎるんですよ。私のような天の使いが直接交渉しに行くと期待しちゃうんでしょうね。振ったら金が出てくる小槌とか、不老不死の薬とか、そういうのチラつかせないと引き受けてくれないんですよね」
「強欲だなぁ。じゃあ、この際動物とかでもいいよ。熊とか強そうなのいない?」
「熊ですか……」
天子は備前近郊に住む野生動物の名簿を調べるが、やはりすぐに結論を出した。
「無理ですね!今の予算でいける動物だと、いいとこ猿が限界ですね」
「じゃあその中で一番いい猿選んで!」
天子は備前近郊の山に住む猿たちの中から、性別、容姿、戦闘力、忠誠心など様々な要素を勘案し、一匹の猿にたどり着いた。
「この猿などどうでしょう。自身の住む山で近々新たなボス猿を決めるらしいのですが、強力なライバルがいるせいで、今一歩票を伸ばせずにいるようです」
「その強力なライバルの方の猿はダメなの?」
「旅に出る理由がないですからね。今のまま行けばボスになれますから」
「確かに。うん。じゃあ家来一匹目はその猿で決定」
「わかりました。では上手いことやってタイミングよく出会うように仕向けておきますね」
「うんうん。ただちょっと気になるのは、猿ってけっこう賢いから。鬼を目の前にして裏切っちゃう可能性ない?念のため忠誠心高そうな動物も探しとこう」
「そうなると……まぁやはり犬ですかね」
「いいじゃん、犬。いいよ」
「あ。犬はいいのがいますよ!確か、近くの山で鬼に仲間を襲われて復讐に燃えてるのがいたはずです」
「野良犬?それ犬じゃなくて狼じゃない?」
「狼だったら願ったり叶ったりでしょう」
「確かに。じゃあ家来二匹目はその狼に決定ね。あ、でもちょっと待って」
天帝は腕を組んで「うーん」と考え込んだ。
「どうかしましたか?」
「なんか下界でさ、犬猿の仲っていう言葉あるよね」
「言うらしいですね」