「そうそう!日本にも英雄を誕生させて、鬼退治してもらって!そしたら日本の皆もモチベーション上がって経済活性化するし。この企画書と一緒でメディアミックス?狙えるじゃーん」
天帝は再び身を乗り出して天子に詰め寄ったが、天子は手を天帝の顔の前に差し出して制止した。
「天帝……さきほども言いましたが、天界から日本に送り込める人材はおりませんよ」
「今はね」
「ど、どういうことですか……」
天子の怪訝な顔を後目に、天帝は窓の外をゆっくりと指さした。天帝の指さすその先には巨大な仙桃の樹がそびえ立っていた。
「天帝……まさか」
「もう一回。仙桃落っことしちゃおうと思う」
にやりと笑う天帝を天子が両手を広げて止める。
「ちょっと待ってください!天帝!わざと落とすんですか?正気ですか?釈迦如来様が黙っちゃいませんよ!」
天子が天帝に詰め寄るが、天帝は顔を背けて知らんふりをする。
「どっちにしたって、このまま放っておいたら釈迦如来黙ってないもん」
続けざまに天帝は天子に顔を近づけて言った。
「大体さぁ。おまえ東アジア地区長だよね。日本もおまえの管轄でしょ?中国の経済施策が上手く行ったって、日本が今のままだったらおまえもただじゃすまないでしょう」
「う。そ、それは……」
「おまえ釈迦如来会ったことある?お釈迦様って指すげー長いって知ってる?釈迦如来のデコピン、超痛いからね」
天子にとっては想像を絶するものだったのだろう。深く溜息をついて、天子は観念した。
「わかりました。わかりましたよ。で、私は何をすればいいんですか」
「とりあえず私が新鮮な仙桃を下界の川に流すから。おまえはその桃が良心的な人間に拾われて、立派な徳を積めるよう段取りしなさい」
「あの。そういう下界の人間を操るようなのって、予算がかかるんです。今日本には経費かけられないの知ってるでしょう」
「じゃあ信濃川の上流から流す?日本一長い川だし、拾ってもらえる確率高くない?」