「ありがと…」
日夜子が鼻声でつぶやくと同時に、僕らの間はそっけないバスのドアで閉ざされた。
榊 日夜子の名残月
天根専務は、約束通り東京にあたしのママのお墓をつくってくれた。それが、ついていこうと思った一番の理由だ。専務と千石のおばさんは、結局別れたらしい。今となってはどうでもいいことだけど。駒場の寮に入ったあたしは、本格的にモデルの仕事をやるようになった。事務所にお芝居の仕事をやれと言われても、意地でもやらないと決めている。
大好きなあの子たちに、あたしが仕組んだことを気づかれてしまったら悲しいから。