言いたいことだけ言うと、猫凪さんは満足そうに去っていった。
彼女はグループとか、そういう縛りが嫌なんだろうな。彼女のペースでまわりと関わる。かっこいいけど…
「できそうにないなぁ」
いろんなことが一日ぐるぐる頭を駆けめぐったけれど、家に帰るとお姉ちゃんがいた。
もともと一人暮らししていたけど大学がこっちの方だから、もしかしたら一緒に住むようになるかもしれないという。
毎日新しい顔ばかり見ていた私は、なつかしい姉の顔をみたとたん、ホッとして涙が止まらなくなった。
「どうしたの? 学校つらい? いじめられた?」
首を横に振る。肉体的ないじめではない。ただ、誰ともしゃべれない世界は苦痛だった。心底安心した。ああ、私には居場所がある。
「お姉ちゃんが味方だから。つらかったら、他に転校したっていいんだよ」
うん、うん。
逃げたっていいんだ。
アリスだって、女王に首をはねられそうになって、不思議の国から逃げ出した。
追って、逃げて、走り続けて、疲れたよね。でも、私はここに逃げ込める。
「ありがとう。でも、もうちょっと頑張ってみる」
お姉ちゃんは絶対絶対連絡するのよ、と念を押して帰っていった。