牛乳イッキでクタクタタプタプになっていた昼休み、目の前にいきなり人が現れてびっくりした。え、えと、学校で先生(とさっきの松田)以外の人に話しかけられたのは、いつぶりだっけ。
「苦手なのに、よく飲んだねえ? ぷふっ」
目の前にいたのは敬遠してた猫凪千恵だった。そんな笑わなくても。できたら「大丈夫?」とか、優しい言葉が聞きたかったんだけど。
私が猫凪さんのところに行かなかったのは、彼女がとても一人だったから。誰かを必要とする一人じゃなくて、一人がいいって感じがした。一匹狼? 一匹猫? 的な。
「宇佐美と話せばいいじゃない」
するどい。私は今でもやっぱりウサの本心が知りたい。でも、怖い。
「麻里香が話させてくれないよ」
「そんなこと。家に行くとか、電話するとかさ」
……それ、怖くない? ストーカーっぽい。
「麻里香もいつもいるわけじゃないし。あの子だって別に所持品じゃないんだよ」
そんなのわかってる。ウサは自分の考えであそこにいるんだってこと。
「猫凪さんは、人の目とか、怖くなったことないの?」
「そんなの気にするの、無駄。私はどこにでも行けるし、誰とでも話せる。誰にも邪魔する権利、ないでしょう?」
強いなあ。たしかに猫凪さんは、早苗とも、男子とだってよく話している。他校とかにも知り合いがたくさんいそうだ。