小説

『ユリ』田中りさこ(『ヒナギク』)

家の近くの河川敷に着く頃には、沈みかけの夕日が水面に反射して、きらきら光った。友莉はかがみこんで、ワンピースに包まれた花を地面に置いた。
水色のワンピースの布地から、花がのぞいた。
ヒナギクだ。
ヒナギクの花に、ワンピースのヒバリが重なった。友莉には、ヒバリがヒナギクに頭を乗せて、くつろいでいるように見えた。
友莉は、ライターの火をそっと近付けた。火は走るようにして、ヒナギクとヒバリを一気に包み込んだ。
白い煙が天高くのぼっていった。

 

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