小説

『泥棒ハンス』化野生姜(『おしおき台の男』)

ハンスは医者の話を聞き終えるとテーブルに置かれた銀貨をつまんだ。そうして自分に一杯医者に一杯と二杯のビールを主人に頼んでから医者の方に向き直った。

それでどこの絞首刑台だ?ハンスの言葉に医者は東の道を指差した。隣村の入り口だ。そこには他にも何体か死体がぶら下がっている。近くには美味い肝臓料理を出す宿屋がある。そこを目印にするといい。医者はハンスにそう告げた。

ハンスはちょっと考え込むと医者から死体の特徴を聞き、日の沈む頃に村の境界にある森へと向かうようにと言った。夜のうちにハンスが絞首台から死体を盗み、森で医者が宝石を取り出し夜明け前までに元通りにした死体を吊るす。そうすれば一番鶏が鳴く前に間に合うし役人にも気付かれないだろう。そういう手はずで話はまとまった。

月が闇夜を照らす頃。医者は森に隠れてハンスを待った。明かりの差し込まない森は真っ暗で茂みの中から虫の音やフクロウの声が聞こえていた。医者は極力明かりを点けるのを避け、持ち物の輪郭を確かめながら解剖道具に欠けがいないか確かめていた。森の奥には目印にしていた宿屋の明かりが薄ぼんやりと見え、医者は心細い思いをしながらでハンスがやってくるのを待っていた。

しばらくして、森に聞こえてくるほどの鋭い金切り声が宿屋の方から聞こえてきた。そうして医者が驚いていると向こうから何かをかついだ影がやって来る。慌てて明かりを点けるとそれは袋をかついだハンスであった。ハンスは医者に笑いかけるとここで明かりは目立つからその先の窪地で解体をしてくれと医者に頼んだ。医者はそれに従い二人は窪地へと向かった。
 

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