目を開けると視界に曇り空が広がった。
白いものが俺の顔めがけてゆっくりと落ちてくる。雪だ。
周囲から車の騒音や人の騒めきが聞こえる。
「気が付いたか。大丈夫か?」
心配そうに俺を覗き込む男の顔が見える。
俺はゆっくりと上体を起こした。両腕を動かしてみるが無事のようだ。脚を動かしてみるが怪我はない。俺はゆっくりと立ち上がった。腰や肩に鈍い痛みはあるが軽い打撲程度で済んだようだ。
「無理しない方がいい」
年配の男が話しかけてくれる。
若い男が動揺した表情で立っている。ぶつかった乗用車の運転手だろう。
「大丈夫ですか? 今、救急車が来ますから・・・」
目を横に向けると、俺のバイクが無残な姿をさらしているのが見えた。横倒しになり、乗用車にのしかかられ、ぐしゃりと押しつぶされている。この状態では修理は無理だろう。
なんともやるせない気分になった。
俺は空を見上げると、ゆっくりと深呼吸をしてみた。
ほんのちょっとクリスマスが好きになった。