十月十日
ジャーヴィス・ペンドルトンがあしながおじさんだということをジュディ・アボットが知ったときの顔を、彼は一生忘れないだろう。彼は驚くジュディを抱きしめた。彼らは許された面会時間の間に、今後のことについて話し合った。ジャーヴィスが退院したらすぐに結婚式を執り行い、ニューヨークのペンドルトン邸で一緒に暮らそうと誓い合った。
看護婦が病室に来て面会終了を告げると、ジュディは名残惜しそうに別れの挨拶をして帰って行った。彼は一人病室に取り残された。
ジュディ・アボットはジャーヴィス・ペンドルトンの病室を出て、白い無機質な廊下を歩いている。少女の頃から抱いていた、大金持ちと結婚するという夢が叶うということに満足し、にたりと笑った。
あしながおじさんはジャーヴィス・ペンドルトンなのではないか、とは以前から予想していたことであったが、驚いた振りをするのは至極簡単だった。彼女は小さい頃から、嘘をついたり演技をしたりすることが得意だったのである。
彼女はふと、今日のことをあしながおじさんであるジャーヴィス・ペンドルトンに何と手紙に書こうか、と考える。
やはりいつもの様に、事実と嘘が入り乱れた手紙を書くことにしよう。