七月二十日
ジュディからの手紙が途絶えた。これほど手紙の間隔が空いたことは今までになかった。マクブライト家への訪問を許可しなかったことを、相当根に持っているらしい。しかしジュディとジミーが親密になってしまうことを考えれば、手紙がないことの方がずっとましだった。
それにしても、なぜそんなにマクブライト家へ行きたかったのか。ジュディはジミーのことが好きなのではないか、という不安がジャーヴィスの心に渦巻いた。
八月三十日
ジャーヴィスはロック・ウィロウ農場に滞在し、ジュディとの時間をたっぷりと過ごしていた。
小さい頃はよくこの農場に来たものだ。だが所有者ではあるものの、大人になってから訪ねたことは一度もない。久しぶりに来たジャーヴィスを、農場の人たちは喜んで歓迎してくれた。
ジャーヴィスとジュディは毎日一緒に遊んだ。釣り、射撃、乗馬、登山・・・。ジャーヴィスは様々な遊びをジュディに教え、彼女はその遊びを満喫した。余りにも二人で楽しく過ごす時間が多かったため、既に恋人同士なのではないかと錯覚してしまいそうな位だった。ジュディの生き生きとした表情を見て、彼女は自分に対して好意を持っているのではないか、と彼は思った。あしながおじさん宛の手紙にも、ジュディはジャーヴィスと一緒に過ごしてとても楽しかったと詳しく書いている。
それなのになぜジュディは、あんなにもマクブライト家に行きたかったのか。自分と一緒にいるよりもジミーと一緒にいたいと彼女が感じているとはとても思いたくない。
九月十三日
ジュディ・アボットが大学で奨学金を獲得したらしい。あしながおじさんからの学費は不要、と手紙には書かれていた。
何ということだ。ジュディはあしながおじさんの金で生活することで、あしながおじさんに恩義を感じなければならない。その恩義が二人の関係をより確固たるものにするのだ。奨学金などもらってはいけない。
ジャーヴィスはすぐに秘書に連絡を取った。
九月二十九日
秘書を通じて奨学金を受けないよう説得させたが、ジュディは聞き入れなかった。ジャーヴィスは大学に手を回し、奨学金を与えないよう画策するつもりだったが、彼女はその前に勝手に大学の庶務課に行って奨学金を受ける手続きを済ませてしまっていた。
彼は憤慨したが、為すすべはなかった。彼女と自分を繋いでいた鎖が切れてしまったように思えた。