僕はもう、僕自身がいらない。
永遠なんてどうでも良い。
ただ、傍にいたかっただけ。
それだけの願いも叶えてくれず、誰もが飛びつく永遠を君は選んでくれかったね。
人魚にとっては永遠なんて当たり前だけど、人間の間でもそこまで価値がないものなのかな。長生きはみんなしたいっていうけれど、死にたいとは思ってるなんてちょっと矛盾してるし、分からないよ。そう、僕は最期まで君の気持ちも分からないままだった。
ああ、でも、今なら少し分かるかな。
息が苦しくて、海底に引っ張られるみたいに体が沈んでいっているから。
全身で苦しいと叫んでいるのに、それから逃れることもできないままでいる。
こんなことで苦しくて死んでしまうのが人間なのか。
もしかして、人間として生きることはできないけれど、人間として死ぬことはできるのかな。そうしたら、人間のままで死んだ君と一緒になれるのかもしれない。
苦しいのにおかしくて笑ってしまう。けれど代わりに涙が出た。でも、全部それも海に溶けていく。
重い海の中でも届く太陽の光を見つめながら、僕は見えない彼女に手を伸ばす。
やっと、君と同じになれた。
それだけのことが、こんなにも嬉しいなんて知らなかった。
そして、こんなにも君を好きになるなんて、思いもしなかった。