小説

『出自』滝怜奈(『かぐや姫、桃太郎、親指太郎』)

 学校に進学したって真っ先に噂になるのは私の出自である。みんな口をそろえて「本当に竹から生まれたの?」と聞いてくる。毎度毎度同じ質問にうんざりする。そして、話題は私の名前に移るのだ。
「竹中美姫って、まさにかぐや姫って感じ!」
ああそうですか、としか言いようがない。これほど父の姓を嫌っている娘はおそらく日本で私だけだ。早く結婚して違う姓になりたいと強く願う。そして、美姫という名前。残念なことに、私は美しい姫と呼ばれるほどの外見ではない。名前負けしているのだ。以前、このことを母に伝えたら、
「やっぱり『かぐや』って名前がよかったかな。『月姫』で『かぐや』っていうのも考えたんだけど、画数がよくなくて…。」
と言っていた。そういうことではないのだ。それに、「月姫」で「かぐや」と読ませるなんて、キラキラネームすぎる。満月の光よりもキラキラしているではないか。
 こうして私は自らの出自と名前、そして変わり者の両親の元でそれなりの苦労をして育ったのである。


 竹から生まれたとはいえ、生物的には普通の人間と何ら変わりはないので、私は高校を卒業したのち、大学に入学した。大学は実家から離れた土地の大学を選んだ。少しでも私のことを知らないであろう人たちがいる中で新しい人間関係を築きたかった。
 入学したばかりで緊張するものの、大学は居心地がよかった。高校までのように生徒同士がずっと一緒にいるわけでもなく、私のことを知っている人もおらず(私が全国区で話題になったのはせいぜい一年ほどだったのだ)、地元よりもいい意味で他人に関心がないのだ。ここで快適な日々を過ごし、このまま就職し、結婚し…。他人の好奇の目から解放された人生が今、始まる—そう思っていた。
 最悪な日というものは、突然訪れるのだ。

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